映画「ガタカ」は、SFの形をしたヒューマン・ドラマ。遠回りした結果、自分の居場所に気づく男の話。

レビで放送されていた「ガタカ」を観ました。

見るのはたぶん3回目くらい。
「ガタカ」ってSF映画ではあるのだけど、その中身は、実は人間ドラマ。

世界のどこにも居場所がないと感じていた男が、法を犯してまで愚直に夢に向かって突き進んだ結果、ついに自分の居場所を見つけることができた。という話でした。

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「ガタカ」ざっくり背景

遺伝子操作で子供を作るのが普通の時代。自然受精で生まれた子は「神の子」と言われ、ヴィンセントもそのひとりだった。遺伝子操作で生まれた優秀な遺伝子を持つ子に比べると、先天的な病気が見つかるなどしたため、「不適格者」として差別的な人生を送る羽目になった。優秀な遺伝子を持つ弟・アントンとは、ずっと比較され続け、そしてあらゆる面で負け続けたヴィンセント。ある日、遠泳の勝負でついにアントンに勝つ。運命は変えることができると信じたヴィンセントは、ひとり家を出て、夢だった宇宙へと旅立つため、優秀な遺伝子の持ち主であるジェローム・モローへとなりすまし宇宙局へと忍び込むのでした…

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運命に刃向かう生き方を選んだ男の話

「ガタカ」は、決められてしまった運命に対して刃向かう生き方を選んだ男の物語です。

決められてしまっていたのは、優秀な遺伝子を持たないものは、
職業も選べず、なにもやりたいことができず、遺伝子検査からわかる寿命の年月が過ぎるのを
ただただ待たなければならないこと。

生まれた瞬間から死ぬまでの遺伝子による束縛です。

しかし、そんな人生が待っているとしても、
夢を持つのは自由でした。

ヴィンセントの夢は、宇宙へと旅立つことでした。

差別的な人生しか待っていない、地球での暮らしとの裏返しなのでしょう。
きっと宇宙に行けば、遺伝子なんかに決め付けられない人生が待っていると、
無意識に感じていたのではないでしょうか。

無心で宇宙を目指し、でもその夢破れるも、諦めきれず、ついに遺伝子詐称のエキスパートに相談します。
自分の存在を変えてまで、自分の居場所を求めて突き進みます。

身分を偽る候補として紹介されたのが、遺伝子上のエリートで、身体障害を負ってしまったジェームズモローです。

ジェームズ・モローという別人に成り代わろうとする努力は、ヴィンセント、半端ないって。です。

左利きを右利きに変えたりするくらいは序の口で、
ちょっと足りない身長は足を切断して(たぶんボルトかなんか埋め込んで?)伸ばしもしました。

自分のフケや毛髪から遺伝子情報がバレてしまわないように
自分の痕跡を残しモローの髪の毛を櫛に残したり、日常的な努力も半端ないです。

誰にも言えない秘密を抱えながら、孤独に、自分の可能性を信じ、突き進んだヴィンセント。
夢の宇宙行き直前の殺人事件が起きたことで、状況が変わります。

身バレしそうになり、身バレしてしまい、逃れるために協力してくれる人がいて、
夢が叶うために協力してくれる人が現れます。

そうやっていろんなものを乗り越えて、夢が叶って木星へと旅立つロケットに乗り込むことができたヴィンセント。

そこで、気付くんですね。そんな人々への名残惜しさを。地球への思いを。地球にも自分の居場所を作ることができたということを。

夢に向かって脇目も振らず一直線に進むのって、孤独さを感じるし、なにかすべてを犠牲にしているようにも見えますが、
そんなときでもちゃんと見てくれている人はいるんだということを強く訴えかけていました。

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絶望から希望を見出した男の話

「ガタカ」は、ヴィンセントの冒険譚ではあるのですが、
メインキャストそれぞれにドラマがあるのがすばらしいです。

ヴィンセントに遺伝子を提供することになったのが、ジェームズ・モローという人物です。

モローは、遺伝子上のエリートで水泳界のスーパースターでした。
しかし、期待されて出た世界大会で金メダルを逃して銀メダル止まり。

期待された結果を出せなかったことに深く心に傷を負って、自殺未遂。
下半身付随になっていました。

水泳で世界一になるという夢が断たれたいま、生きる希望を失っていたわけです。

そこへ現れたのが、夢のことしか考えていないヴィンセント。

モローは、そんなヴィンセントに自分を重ね合わせてしまうんですね。
そして、ヴィンセントの夢が叶うことに、自分の生きる希望を見出しました。

そうなってからのモローは、ヴィンセント以上に、成り代わるために必要な行動をとります。

ヴィンセントが宇宙局で怪しまれないために、検査時に必要な、
自分の毛髪や血液や尿や爪とかいろんなものを、毎日毎日準備します。
それはもう病的なくらい慎重に。
(たまにお酒を飲みすぎてしまう嫌いはあったようですが)

ヴィンセントの身元調査のために自宅に刑事が訪れた時は、
ヴィンセントなりかわるために、車いすから飛び降りて、上半身の力だけで螺旋階段を這いつくばって登りきり、
怪しまれないように行動したり。

ヴィンセント以上に、ヴィンセントの夢が叶うように情熱を燃やします。

そして、宇宙へ行くことができた暁に、心置きなく焼身自殺を遂げるんですね。

ヴィンセントの夢を叶えるという、新しい夢を持ったモローは、
不完全燃焼だった水泳で成し遂げられなかったことを、ヴィンセントの夢を叶えることで燃え尽きることができたんですね。

ヴィンセントの乗るロケットの噴射と、モローの(焼却炉内での焼身自殺でした)命を燃やす炎のカットバックは、
とても印象に残るシーンでした。

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「情報じゃなくて、やっぱり人は中身」を選んだ女の話

ユマ・サーマンが演じたのが、ヴィンセントの同僚役・アイリーンです。

もともと相性の良さを感じていたヴィンセントには良い印象を持っていました。
殺人事件が起きたのをきっかけに、ヴィンセントの遺伝子を調べることになって、
疑いの目を向け始める訳になるのですが、遺伝子で選ぶんじゃなくて、自分のフィーリングで選んだのが彼女です。

ヴィンセントとのやりとりもとってもおしゃれなんですよね。

「ガタカ」ではモチーフが繰り返される(しかもわかりやすく)のが特徴でもあるのですが、
遺伝子情報が書かれた紙が「風にさらわれてしまう」シーンは最高でした。

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科学よりも自分の目と耳と心の判断を信じた男の話

もうひとり忘れてはならないのが、検査官です。

ガタカには、遺伝子で身分を調べたりするシーンがやたら出てきます。
その中でも、一番最初と、そして一番最後に検尿検査するシーン出てくる検査官とのやりとりが、またすばらしいです。

会社の健康診断なんかと違って、検査官の前でちゃんと放尿するスタイルの検査法なので、騙したりなんかはできないんですが、
たぶん、特殊加工のペニスでも作って装着していたのでしょう
(検尿中にヴィンセントのペニスを、検査官が褒める会話があったりもしますんで。「立派」とか「いつでも自由自在だね」とか)

ヴィンセントは、モローの準備してくれた尿を使って毎回検査をパスしていました。

検査官とのシーンはいつも他愛ない会話ばかりで、
「このシーン必要あるのかな?」とも感じるんですが、最初は。

これがラストのラストで、意味のあるシーンに早変わりするんですね。

ロケットに乗り込む直前、ヴィンセントの予期せぬことが起こりました。
それが、最後の最後に用意されていた検尿検査です。

ヴィンセントはモローの尿を準備していませんでした。
その直前まで事件のことなんかでいろいろあったので。

なので、最後の最後で、別人になりすましていたことが遺伝子検査で明確にされてしまいます。
(この前に何人かにはすでに身バレしてはいるのですが)

ヴィンセントも、どうしようもなく、一度は観念します。
夢も諦めます。身分がバレたら不適正者に自由意志はないですから。

でも、検査官はその尿検査結果を見て見ぬ振りするんですね。

なぜなら、最初から、別人だと知っていた、と。
「右利きの人は、左手では持たないものだ」と言って。

なるほどー。

さすがのヴィンセントもそこだけは無意識に本来の利き手を使ってしまっていたんですね。

検査結果よりも、自分の目と耳と、そして心で判断して、検査OKと言って、ロケットへと通してくれました。
機械やデータなんかに頼らない自分の信念、それを見ることができました。

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繰り返されるモチーフ

「ガタカ」の中には、モチーフの繰り返しがいくつも出てきます。
上述の「遺伝子情報の紙が風にさらわれる」シーンだったり、「検尿検査」シーンだったり。

ほかにも、優秀な遺伝子を持つ弟との水泳勝負なんかが、重要なモチーフです。

モチーフは、ただ繰り返されて使えば効果的かというと、やっぱりそうじゃなく。
同じシーンを描いていても、その使われ方や意味合いが変わることによって、
映画のストーリーに強い意味を与えることができます。

そのモチーフの持つ意味合いの変化が、登場人物の変化になるわけですね。

「ガタカ」で繰り返されるモチーフは、その出現もわかりやすくて、その変化の仕方もわかりやすいので、
ストーリーテリング手法としてとてもよい勉強になりました。

そんなこんなで、きょうも話半分で。

こんな映画と出会った

amazonプライムでも見れるんですね。

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